USTREAMは失われていたコンテンツを顕在化させた

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USTREAMでのライブ配信がここのところ活発に行われている。このサービスは2007年3月に誕生したものですでに3年以上も経過している。

しかし今年になってからUSTREAMの存在を知った人も多いのではないだろうか。
なぜここにきてUSTREAMが脚光を浴びているのか。これには大きく2つのポイントがある。

  1. 2009年5月にSocial Streamとして、Twitterとの連携機能を実装
  2. 2009年12月にiPhoneで簡単にライブ配信ができるアプリ「Ustream Live Broadcaster」が登場

このきっかけによって、USTREAMが注目され「誰でもiPhone1つあれば簡単に配信できる手軽さ」と「Twitterによるリアルタイムな口コミの仕組み」の相乗効果によって、いままで動画配信の経験がなかった人たちに広がっていった。

USTREAMはテレビから視聴者を奪う?

今年に入ってからUSTREAMの配信はますます活発になっており、iPhoneをはじめとして、PCのウェブカメラや、ビデオカメラをPCに接続して配信する人が登場し、徐々に本格的にライブ配信を行う試みも増えてきている。
いまやUSTREAMは、Twitter上で毎日のようにライブ配信がされているのを目にするようになった。
動画コンテンツということもありテレビと比較されることも多く、「テレビもういらないよね。」といった発言もよく耳にする。確かに私自身、USTREAMで時間をとられることが増えている。
しかし、テレビと比較するのは必ずしも正しいとはいえないかもしれない。テレビと比較してUSTREAMを視聴しているというよりは、Twitter上でたまたま自分の興味をそそる番組がやっていることを知ったから見ているだけとも考えられないだろうか。つまり、しっかりと比較して選んでいるというよりは、ソーシャルメディアの口コミがきっかけとなって、USTREAMの番組に辿り着いているのである。
逆にテレビで面白い番組がやっていることをTwitter上で知ってみることもある。
しかし、ここで大きく違うのはUSTREAMはすべての番組のページにTwitterのタイムラインが表示されている。そして、番組を見ながらツイート出来るようになっていて、USTREAMからツイートすると、発言+番組のハッシュタグ(もしくは主催者のアカウント名)+番組のURLがツイートされる。
いわば仕組みができあがっているのに対して、テレビはシームレスにはTwitterとはつながっていない。当然のことながらリアルタイムの口コミはネット上で行われる方が圧倒的に多い。

もう1つの重要なポイント「多様性」

どの市場でもいえることだが、非常にニーズがニッチなものになってきている。わかりやすい代表例が、高級ビールと、発泡酒の間の市場を狙ったプレミアムビールのヒット。つまり個々のニーズが多様化しており、それに市場があわせるように選択肢も増えている。
たくさんの選択肢が増えれば、巨大なシェアを誇っていたメディアのニーズが弱まるのは自然の流れだ。
いま盛んに議論されている、テレビ、新聞、ラジオの落ち込みも「多様化」と「選択肢の増加」によっていままでのビジネスモデルが崩れている というのが大きいのではないかと思う。

一人のニーズが満たせれば、完全な番組になりうる

USTREAMの番組には、誰でも楽しめるというよりは「特定の人にだけ面白い」といった番組が多いと感じている。どうしてそういう物が成立するのか。わかりきったことだが、ほとんど無料で配信ができてしまうからだ。
いままでコンテンツ化していなかったものまでコンテンツ化している。今まで通り進行するイベントや、ラジオでもUSTREAMで配信することで、1つの番組になってしまうのだ。そういったコンテンツはあらゆるところに溢れている。もはや、番組制作がテレビ局だけの特権ではなく、規模を問わなければ誰でもできるものとなった。
従来であれば、配信コストが簡単に数百万かかっていたのだから、動画配信をするかしないかは、慎重に検討されて「費用対効果が薄ければ実行しない」という判断が必要であった。しかし、今は「問題なければやっておこう」といったノリでライブ配信されることもある。つまり、いまままで映像化していなかったコンテンツが映像化しているのが現状といえる。
「USTREAMはテレビ番組を作ってもクオリティでかなわない」という話がある。ここでいうクオリティとは何か?と考えてみると、結局のところ誰が見ても平均的にストレスがなくみれる。ということなんではないかと私は考えてしまう。
人のニーズは様々である。その人が楽しめれば、それで問題ない。このことをはき違えるとコンテンツ提供者はユーザーが理解できず、すれ違いを続けるだろう。USTREAMでは一人のユーザーのニーズが満たせれば、その番組は成立しているのである。そういう番組でも流せてしまうのだ。

テレビもUSTREAMを使えばいいのではないか

テレビもUSTREAMを活用すればいいのではないだろうか。テレビで放送されていないコンテンツはたくさんあるはずだ。生放送であればUSTREAMと連動して、テレビとは違うカットをUSTERAMで見せるということも出来るはずだ。
例えば24時間テレビであれば、ランナーをひたすら映すチャンネルなど、たくさんコンテンツになるものがある。
そうすれば、テレビもソーシャルとシームレスにつながるだろう。テレビにとってUSTREAMはソーシャルとの架け橋になる。
ユーザーの選択肢は増えた。そして、いままでコンテンツ化していなかったものまでコンテンツ化している。これからの時代は対立構造を築くのではなく多様性をうまく受け入れて、ユーザーを巻き込んでいくことが求められるのではないだろうか。

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Author
Web制作会社にデザイナー、ディレクターとして従事後、フリーを経て、現在は株式会社プレイドに所属。