電子書籍が必要か否かの議論はもはや必要ない

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そんな話は聞くまでもないという人も多いだろう。しかしあえて整理の意味でも書きたいと思う。
まず、電子書籍に関しては既にユーザーの選択肢の1つになっていることを認識すべきである。それはもう「流行る」「流行らない」という話ではないし、「紙のほうが読みやすいから電子書籍は普及しない」という話でもない。
これは音楽の現状と照らし合わせればわかりやすいだろう。
現在ユーザーはCDを買うか、iTunes Storeなどでデジタルデータで購入するかを選ぶことができる。
従来はCDのみしか選択肢がなかったが、いまは2つの選択肢がある。結果的にCDの販売量は年々落ち込み続けている。
一方で、世界での数字になってしまうが、iTunes Storeにおける楽曲のダウンロード数が100億ダウンロードを突破したことが今年の2月15日に発表された。ここからは音楽のニーズが減ったのではなく、ユーザーがCDではない違う選択肢を選ぶようになったことがわかる。


私の場合、CDを再生する機会は皆無になった。CDを購入しても、使用するのはiTunesに取り込むときだけだ。もはや形ある物として残したいか、残さなくても良いか。その程度の違いである。
しかし、これらの話はそっくり本にあてはまるかといえばそうではないだろう。

アナログからデジタルへ

現状、CDはすでにデジタルデータであるのに関して、本はあくまで紙がメインだ。
本をスキャンしてデジタルデータに取り込んで読んでいる人もいるが、まだほんの一部だろう。つまり、本のデジタル化はまだ始まったばかりである。
この点においては、楽曲のデジタルデータの販売が始まった当初とはかなり異なる点になるだろう。
しかし、気をつけなければならないのが、音楽よりも恐ろしいほど急激にデジタル化への流れが進むことが予想できる点だ。
私は以下の3点をポイントとしてあげたい。

  1. 流通経路が整った
    AmazonのKndle Store、AppleのiBooks Storeという、いわば大手となるものが登場した。
  2. 電子書籍を読むための最適なデバイスの登場
    これもKindle、iPadが既に選択肢としてある。これから様々な選択肢が生まれ、ますます便利になっていくだろう。
  3. ユーザーのリテラシーと環境
    PCの利用は一般的なものになったと言っていいだろう。ある意味ユーザー自身の準備はできている。

電子書籍自体は新しいものではない、なぜ今熱を帯びる?

上記に3点述べさせて頂いた通り、環境が整ったことが大きい。
そして、決定的なのはiPadの登場によりユーザーの期待が一気に高まっているということだ。
iTunesは多くの人が受け入れた使いやすいサービスである。それと同水準のサービスがスタートすることをユーザーは期待しているのだ。日本の出版社が各社がばらばらな規格を持ち込めばたちまちユーザーは不満を持つことになるだろう。

電子書籍は流行る?

流行るか流行らないかという話ではない。何故なら、アナログかデジタルかという話だからだ。
普及する・しないを議論したいのであれば、デジタル化に変換する方式の話に留めたい。

電子書籍は読みにくい?

それは個々が決めることがあって、誰かが定義することではない。
紙と同じような感覚で読めるKindleが既に登場している。電子書籍と比較したときに紙の書籍がこだわるべき点は、読みやすさではなくて形ある物としての価値である。

いま必要な議論は「どうすることがベストか」

いま考える必要があることは、電子書籍をどのように迎え入れるかだ。
ユーザーの選択肢が増える分当然ながら紙の出版物の流通量は減少するだろう。しかし、これは逆らえない流れである。
無理に逆らえば、iTunesで欲しい楽曲が買えないような不便さや、フォーマット形式の違いで不自由を強いることをユーザーに与えるだけだ。
電子書籍の流れは歓迎するしかない。その上で、自分たちがとるべきアクションを考えるべきだ。

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Author
Web制作会社にデザイナー、ディレクターとして従事後、フリーを経て、現在は株式会社プレイドに所属。