コンテンツを楽しむ敷居を下げた「Hulu」、これは想像以上に大きな変化を生むだろう

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定額で映画やドラマなどの動画コンテンツを見ることができる「Hulu」が、4月12日に月額1480円から980円に値下げした。日本でHuluのような定額サービスを実現するには、相当な難しさがあったと思われるが、テレビ東京のコンテンツを提供するなど、アメリカだけでなく日本のコンテンツも順調に増やしている。そんな中での、今回の値下げの発表にはかなり驚かされた。

hulu

私はHuluが日本でリリースされて以来使い続けているが、なかなか快適にサービスを利用している。特に気に入っているのは、前回再生していた動画の続きをすぐに視聴できるところだ。
パソコンで見ていた続きをテレビでみたりiPhoneでみたりすることが可能で、ちょっとした空き時間にコンテンツを楽しむことを可能にしている。
これに関連して、最近自分でも驚いたことがある。いま大好きな海外ドラマ「24」をあらためて見返しているのだが、DVDで全巻持っているにも関わらず、ついHuluで見てしまっている現状があるのだ。
なぜかといえば、Huluだとテレビ、パソコン、iPadなど、どこでも再生ができるし、前回見た続きをすぐに再生することができるので、ちょっとずつみるのに手間がほとんどかからないのだ。
こんな体験を通じて、Huluは「コンテンツを見ることへの敷居がほとんどない」ということを改めて実感した。


様々なコンテンツが溢れる現在において、この「敷居」は重要なキーワードなのではないだろうか。
これはコンテンツ全般に言えることで、音楽にもその影響は出てきている。先日オリコンのデイリーシングルランキングの3位の販売枚数が693枚だったことが話題になったが、「CDを買う」「CDをレンタル」するという行為自体が、コンテンツを楽しむ上で敷居になってしまうのだ。アルバムならまだしも、シングルCDだと顕著にその傾向が現れる。
多少音質が悪かろうが「YouTubeで聞いてしまえばいい」という感覚は当然あるものとして考えるべきだ。「良い音質で、いい環境で音楽は聞きたい」というのは、必ずしも当てはまる要望ではない。
この流れに対抗するには、iTunesで音楽を買えるだとか、同等の状況を作り出す手は打つべきである。ネットで簡単に曲を買えるというのは必須なのだ。
「YouTubeで聴くほうが手間だろう」という意見もあるかもしれない。でも、「Musictonic」というサービスのように、アーティスト名を入れればひたすらそのアーティストの曲を流してくれるようなサービスも存在する。このような形で手間は簡単に取り去られてしまうのだ。
これからCDは応援消費でしかなくなっていくのではないかと思う。
「コンテンツを楽しむための敷居」を取り除くことはコンテンツの販売者はもっと意識しなくてはならないのではないだろうか。映画を見るときにDVDディスクを入れるのがわずらわしい。DVDを入れてからも予告編や注意書きなどで、本編を愉しむまでの時間がまどろっこしい。
すぐにコンテンツを再生できる、Huluで見たい、Apple TVで見たい。それが当たり前の要望になっていく。
Huluはコンテンツを楽しむための敷居がほとんどない。この感覚になれたユーザーは、コンテンツの見方がどんどん変わっていくだろう。
「敷居が低いコンテンツが選ばれやすくなる」というのは、あながち間違いではないと思う。コンテンツ産業が廃れて手遅れになる前に、このあたりの変化への適応は日本でも進んでいって欲しいものだ。
私が以前この話をしたときに、「良いコンテンツなら敷居なんて関係ない。その程度ならコンテンツに問題がある」という意見があったが、もはやそのようなレベルの話ではないことを認識するべきではないだろうか。
Photo by Wonderlane on Flickr

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Author
Web制作会社にデザイナー、ディレクターとして従事後、フリーを経て、現在は株式会社プレイドに所属。