書籍の無料全文公開キャンペーンのあり方

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昨年11月に「FREE フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略」が発売前に全文無料公開をインターネットダウンロード方式を行って大きな話題となり、Twitterを中心にたちまち口コミが広がったことで43時間で1万人のダウンロードを達成したことが記憶に新しい。
結果的に15万部を超えるヒットにつながったようだ。

この成功事例に感化されてか、各社で全文無料公開の動きがここのところ活発になってきている。

各キャンペーンの特徴

角川歴彦「クラウド時代と<クール革命>」(角川書店)

  • FLASHの電子書籍リーダーで閲覧
  • ダウンロードは不可
  • もちろん印刷も不可
  • 期間限定だが、閲覧に条件はなし

岩瀬大輔著「生命保険のカラクリ」(文藝春秋)

  • ダウンロード可能
  • PDF形式データ
  • 印刷も可能
  • 期間限定だが、閲覧に条件はなし

「FREE フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略」

  • ダウンロード可能(ただし閲覧はダウンロードした特定のPCのみ)
  • 1万人限定
  • 印刷は不可
  • ダウンロード時にTwitterでツイートすることが条件(メールアドレスでも可)

キャンペーンのポイントは何か?

FREEのキャンペーンを見るとポイントがよく押さえられていることがわかる。

  • 期間だけでなく人数制限を設けたことで、限定商品としての価値をつけユーザーの判断を速くした
  • ダウンロード時にTwitterでツイートすることを条件としていた為、ダウンロードした多くのユーザーのツイートがTwitter上に流れた
  • キャンペーンが43時間で1万人に達したことからも短時間で多くのツイートが駆け巡ったことが推測できる
  • ダウンロードが可能だが、印刷は不可だったことから多くのダウンロードしたユーザーが購買にいたったことが推測できる
  • 数量限定ということが、明確な損益分岐点を生んだ

重要なのは口コミの仕組み。これによりダウンロードしたユーザーだけでなく、多くのユーザーがこの書籍を認知したことが容易に推測できる。
また、限定ものだったため、ユーザーに即座にダウンロードを判断させ、いまだけ役立つ情報として、口コミしたくなる仕組みにもなっていた。
残念ながらこのポイントは「クラウド時代と<クール革命>」にも「生命保険のカラクリ」にも期間限定という部分以外には見られない。

無料公開はありかなしか

全文無料公開はプラスなのかマイナスなのかという点が気になるところだが、2つの観点で無料公開は考えられるのではないだろうか。

  1. キャンペーンとしての位置づけ
    プロモーションととらえれば、プロモーションの予算から無料公開できる部数を決定し、キャンペーンを行うことが考えられる。ちなみにFREEの損益分岐点は5万部だったと推測されている。
  2. 内容をある程度知ってもらうという位置づけ
    立ち読みの延長としての全文無料公開という考え方もできる。書店にいけば、時間と本屋の主人が許す限り全文を無料で読むことができる。
    そう考えれば、ある程度の制約がついていれば無料公開することもそれほど大げさなことではないかもしれないと思えてくる。今回の角川の事例がこのケースに当てはまる。

完成版としての価値

正直なところ、本当に欲しい本であれば紙の本を購入して読みたいというのは、まだまだ多数派の意見ではないだろうか。そういった意味では、無料全文公開をしっかりとした目標設定を元に行えば、効果を出しやすい手法といえるかもしれない。
印刷出来てしまうのは、譲歩しすぎな気がするが、やはり完成版のパッケージとしての書籍の良さはフリーのキャンペーンを通じて身にしみていたりする。
最後に気になるのは「生命保険のカラクリ」もダウロード数限定にしていればもう少し貴重な感じがでたのではないだろうか。いずれにしてもそれぞれのキャンペーンがどのような結果になるかは気になるところである。

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Author
Web制作会社にデザイナー、ディレクターとして従事後、フリーを経て、現在は株式会社プレイドに所属。