HP(ヒューレット・パッカード)が個人向けパソコン事業の分離を検討しているというニュースが入ってきた。さらに、タブレット端末「TouchPad」とwebOS搭載の携帯電話事業からの撤退も発表した。(米HPがPC事業を分離へ、webOS事業は打ち切り:クラウドWatch)
HPは世界のパソコン市場で約2割のトップシェアを握る最大手だが、市場の成熟化やスマートフォン、タブレット端末の競争激化で事業の見直しが必要になっており、収益が伸び悩む個人向けパソコン事業を切り離し、ソフトウェアと法人向け事業に重点を移す考えのようだ。
2011年度第3四半期の売上高は前年同期比3%減と減収になっているが、法人向けパソコンが同9%増だったのに対し、個人向けパソコンは17%減という状況だ。
これは後々、「デスクトップパソコン時代の終焉を象徴するニュース」と言われるのではないか。そんなことを予感させるものだ。
法人向けパソコンの需要はしばらく継続されると思うが、個人向けパソコンに関しては、モバイルパソコンへ完全に需要がシフトしていくと思われる。特にタブレット端末がさらにシェアを伸ばしていくとことだろう。
AppleがHPからモバイルPC事業で首位を奪取
タイミングを合わせるようにして、米DisplaySearchが米国時間8月18日に発表したニュースが驚くべきものだった。ノートパソコンとタブレット端末を合わせたモバイルパソコンの世界市場に関する調査結果で、首位の座をAppleがHPから奪ったのだ。(ソース:ITpro)
HPとしてはこれからの主戦場をAppleに奪われてしまった状況だ。Appleが握るシェアの8割がタブレット端末とは言え、Appleが首位の座を握ることになるとは驚きである。高機能すぎる頑固なパソコンを売り続けた、あのAppleがこのような地位を築くとは誰が予想できただろうか。
タブレット端末はさらなる可能性を秘めている
タブレット端末は一般的に普及した段階とはまだ言えないだろう。これからさらに伸ばしていくデバイスだ。
私がなぜタブレット端末がこれからも伸びると考えるかというと、一番の理由はその扱いやすさだ。パソコンは高機能で様々なことが行えるが、そこまでを求めない層はたくさんいる。つまり、タブレット端末はパソコンを扱わないそうにも普及していく可能性が高いのだ。
ここのところ目にするのは、「タブレット端末で調べ物をしながら宿題をする学生」「パソコンを触ったことがなかった高齢者がタブレット端末で初めてのインターネットを楽しむ」というものだ。
日本は高齢化一直線だが、タブレット端末が日本を救うホットラインになるのではないかとまで思っている。
携帯性の高さもこれから非常に重要なポイントだ。リビングで、キッチンで、寝室で、様々な場所で使えるデバイスが求められる。
パソコンを扱いたい人にとっても、デスクトップパソコンではなく、ノートパソコンを家でも使うようになることがさらに増えていくだろう。クラウド化もさらに進む。「パソコンはインターネットの入口であるだけでいい」そんな世界は益々進んでいくだろう。
GoogleのChrome OSは先を見据えた動きだが、まだ少し極端すぎる。そんな中でAppleが発売したMacBook Airは高性能で軽快なOSでありながら低価格に抑え、極めて高い携帯性を備えた、現状の理想を示すようなパソコンになっている。
これからAppleの優位性はますます高まっていくことが予想される。そんな中、HPは早い決断をした。他のメーカーも大きな舵取りを迫られることは必須だろう。
写真:Hewlett-Packard Logo (Macro) / włodi