Apple Musicは音楽サービスの完成形ともいえる素晴らしい出来だった

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月額定額制の音楽ストリーミングサービス「Apple Music」が7月1日からいよいよサービスを開始した。
正直なところ、使う前まではそれほど期待していなかったのだが、使ってみて数分で「こんなサービスを待ってたんだよ!」と叫ぶたくなるぐらい感動してしまった。
このサービスは、Appleが音楽の分野でこれまでやってきたことの集大成なのではないかとまで思えたが、その魅力についてまとめておきたいと思う。
ただ、サービス開始時点では邦楽はかなり物足りない状況なので、「Apple Music」の良さは洋楽を聞く人だけが感じられるものになるだろう。その点はあらかじめ伝えておきたい。

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まず音楽ストリーミングサービスの状況をおさらい

音楽ストリーミングサービスに関しては、最近日本でもサイバーエージェントとエイベックスが「AWA(アワ)」を5月27日に開始し、LINEも「LINE MUSIC(ラインミュージック)」を6月11日に立て続けに開始しており、話題になっているところだ。
海外では「Spotify(スポティファイ)」が音楽ストリーミングサービスとして台頭しており、会員は7,500万人、そのうち有料会員が2,000万人を超えるほどの利用者を集めている。


実はソニーも音楽ストリーミングサービス「Music Unlimited」を2012年7月に日本で開始している。私も数年利用していたが、3月30日にサービスを終了し、Spotifyと提携する形で「PlayStation Music」を開始した。こちらもまだ日本では利用できないが、利用できるようになるとしたら「Spotify」の上陸と合わせてのサービス開始となるだろう。
「Spotify」に関しては、ここ数年日本上陸がささやかれているが、先日電通デジタルが出資したこともあり、サービスを開始する日も近いかもしれない。
ということで、現時点での日本での選択肢は「AWA」「LINE MUSIC」「Apple Music」という状況だ。
単純に曲数で比較すると、「Apple Music」は3,000万曲、「AWA」は数百万曲、「LINE MUSIC」は150万曲以上となっている。ただし「Apple Music」に関しては、米国で配信されているものが日本で配信されていないことがあるようなので、この数字よりはだいぶ少ない可能性もある。

Apple Musicの最大の魅力はレコメンド機能

「Apple Music」の魅力はなんといっても、利用者が好きそうなアルバムやプレイリストを提案してくれる「For You」機能だ。ここにAppleが持つデータが活かされてくるわけだが、利用者が持っているアルバム、好きなアーティスト、お気に入りをつけた曲などを元に、どんどん提案してくれるのだ。
おそらく再生した曲なんかもデータとして取っているものと思われる。

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さらに、気に入った曲やアルバムをマイミュージックに追加することが可能だ。マイミュージックに追加すると、自分の「iTunesライブラリ」に瞬時に追加され、いつでもすぐに聞くことができるようになる。
そのままの状態だと、オフラインになったら該当の曲が消えてしまう仕組みだが、オフラインで聞けるようにダウンロードも可能だ。

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そして、Appleが独自に展開するラジオ「Beats 1」も素晴らしい。ロサンゼルス、ニューヨーク、ロンドンのスタジオからAppleが採用したDJにより24時間放送されるのだが、ラジオに流れて気になった曲をすぐにマイミュージックに追加することが可能だし、はじめて知ったアーティストの他の曲をすぐにチェックすることもできる。この連携が快適すぎるのだ。

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そして、Appleのスタッフによるプレスリストや、Rolling Stones誌やShazamがキュレーターとしてプレイリストを公開しており、その辺りの質の面も素晴らしい。曲名で検索するとプレイリストもヒットするため、好きな曲が入ったプレイリストを探して、新たな曲に出会うことも可能だ。
ちなみに自分で作成したプレイリストを公開することもできる。

音楽ストリーミングサービスに求められるのはリスナーの活性化

「音楽が売れなくなって、アーティストが食べていけなくなってしまう」というのは、音楽ストリーミングサービスの普及を懸念するうえで、よくあがる話だ。無論、当然の懸念といえるだろう。
しかし「Apple Music」を使ってみると、もう引き返せないところまで来てしまったんだなぁと感じる。音楽との触れ方が決定的に変わっていくと感じたからだ。
まず時代背景として音楽過多とコンテンツ過多による時間の奪い合いというものがある。
もはや音楽は世の中に満ち溢れている状態で「Apple Music」が配信する曲だけでも3,000万曲だ。この中から自分にあった曲に自力で出会うのは至難の業である。さらに、音楽だけにとどまらず時間を楽しむためのコンテンツも多彩になっている。動画コンテンツは溢れているし、音楽だってYouTubeで聞く例が増えている。
そういった背景から音楽は新しい局面に立たされているのではないかと思う。いま必要なことは音楽との接触時間をいかに増やし、曲と出会ってもらい、ファンになってもらうことなのではないかと思う。そういった面でみれば、「Apple Music」は完成されたサービスなのではないだろうか。
ニューヨーク・タイムズ紙が伝えたところによると、「Apple Music」では、試用期間中の楽曲再生1回につき、アーティストには0.2セントが支払われるのだとか。
おそらく課金が開始された後の金額はこれよりも高くなるものと思われるが、アーティストにとっては曲が再生されればされるほど、収入につながるかたちになるのだ。おそらく長さなども考慮されるのではないだろうか。
アーティストによっては、売れなくなった楽曲に再び脚光があたる機会になるかもしれないし、考え方を変える必要がある。

Appleがこれまでやってきたことの集大成

最後に、冒頭に述べた集大成という部分をもう少し説明しよう。AppleはiTunesライブラリのデータを送ることで、おすすめの曲を提案する「Genius機能」をこれまで提供してきたし、iTunesで膨大なデータを集めてきた。これがいかんなく発揮されるのが「For You」機能だ。ここは他社の追随を許さないデータをすでに持っているのではないだろうか。
そして、忘れている人も多いかもしれないが、Appleは過去に音楽SNS「Ping」を展開している。これは大失敗に終わったが、「Apple Music」の「Connect」という機能で活かされる形となった。アーティストをフォローして情報を得ることができるほか、「For You」で提案するプレイリストにも反映されるのだ。
「Apple Music」が登場して、新しい音楽に出会うのが楽しくてしょうがない。楽曲数があきらかに多いのも、失望しないうえでの重要なポイントになっているのだろうから、ここまで揃えられるタイミングをずっと待っていたのではないだろうか。豊富な楽曲数なくしては、「Apple Music」の真価は発揮されないからだ。
「iTunes」と一体化する形で登場した「Apple Music」。満を持して登場する形となったが、予想をしっかりと超えてきてくれた。
「音楽と出会える、もっと音楽を聞きたくなる」そんな世界観をAppleは示してくれたように思う。

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Author
Web制作会社にデザイナー、ディレクターとして従事後、フリーを経て、現在は株式会社プレイドに所属。