6月17日に行われたNTTドコモの定時株主総会にて、これまでノーコメントを通してきた「iPhoneの販売」に関して、辻村清行副社長は「優れた端末だが、発売する計画はない」ことを明言した。発売を否定したのは今回がはじめてのようだ。
ここに来て発売を否定した裏には、Androidへの好感触が影響していそうだ。
ドコモは夏の新モデルで、Android端末を一気に8機種投入してきた。しかも、すべての機種に最新のAndroid2.3を搭載し、これまでにない力の入れようを見せた。
実際に、2011年度のスマートフォンの販売目標を600万台と大きく掲げている。
そして、夏の新製品を発表した際に、今回の発言に影響したと思われる重要な計画を明らかにしている。その発表とは、iモード公式サイトに関するものだ。
iモード公式サイト利用者がスマートフォンに移行した際、現在は自動退会となるが、これを自動的にスマートフォン用の会員に引き継げる仕組みを導入する計画だ。これを今年の冬を目標に対応するという。
失うわけにはいかない年間3000億の市場
公式サイトの総売上にあたるiモード情報収入は。年間3000億円近くに達する市場(※)に育っており、このうちドコモは9%(約270億)を収入として得ている。とてつもなく大きな市場だ。
しかし、その伸び率は年間約1割と鈍化しており、「有料サイトの利用が一部のヘビーユーザーに偏り、すそ野が広がっていない」(ドコモ)という状況に陥っており、スマートフォンへの移行でさらに加速することが懸念されていた。
ところが、iモード公式サイトの会員情報をAndroidなら自動的に引き継ぐ仕組みを構築できる目処が立ち、それを冬には投入できそうな状況が整った。
ドコモは、OSのカスタマイズができないなど、制約が厳しいiPhoneではこれが不可能であると判断し、この市場をなくさないためにも、Androidを販売していくという立ち位置が明確になったのではないだろうか。
カスタマイズできないiPhoneでは、ドコモの携帯電話利用者が毎日2600万人(※)が訪れるというiモードのポータルサイト「iメニュー」も失ってしまうことも理由としてあるだろう。
おそらく今回の発言は、iPhoneへの決別宣言と見て間違いないのではないだろうか。
少なくとも1年以上はドコモからiPhoneがリリースされることはないだろう。
先日、米国ではシムロックフリーのiPhoneが発売され、かなり自由度が高まっている。
日本でも他キャリア展開が期待されたが、ドコモユーザーにとっては思わぬタイミングでの残念なお知らせとなった。
※参考文献:2010/12/07 日本産業新聞