他人の人生を生きることで時間を無駄にするな – ジョブズのスピーチを聞いた若者たち

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「人生の時間は限られている。他人の人生を生きることで時間を無駄にしてはいけない。」これは2005年にスタンフォー ド大学の卒業式で行われたスティーブ・ジョブズの有名なスピーチの一節だ。
1月7日にNHK BSの「ドキュメンタリーWave:スティーブ・ジョブズの子どもたち ~ハングリーであれ 愚かであれ~」でこのスピーチを現地で聞いた卒業生のその後を追ったドキュメンタリーが放送された。その番組の中で私が一番心に残ったのは「自分の人生を生きろ!」というメッセージだった。

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先日、「自分の仕事を見つけるということ」という記事を書いた。この話と重なる部分もあるが、今回の話しは、それよりもさらに踏み込む形になる。
この日放送されたのは、スタンフォー ド大学で行われたスピーチから6年ほどが経過したいま、ジョブズの言葉と共に生きた若者たちに、どのようなことが起こり、いま何を考え行動しているのかが紹介されている。
登場した卒業生は、スタンフォード大学という名門校を出て、1000万円を超える収入を得たにも関わらず、順風満帆とは言えない人生を歩んだ人たちだ。
番組はジョブズが語った3つのストーリーで構成されている。その中で気になった言葉と共に、私が感じたことを振り返っていきたい。


スピーチをまだ見たことがない方は、こちらから閲覧していただければと思う。

点と点をつなぐこと:Connecting the dots

スティーブ・ジョブズのスピーチから。

「私はリード大学を6ヶ月で中退した。そして自分の興味と直感に従った。その結果出会ったものは、その後お金に換えがたいものとなった。」
「先を見通して点をつなぐことはできない。振り返ってつなぐことしかできない。だから将来何らかの形で点がつながると信じなければならない。」
「直感、運命、人生、カルマ、何でもいいんだ。その点がどこかにつながっていると信じること。この手法が私を裏切ったことは一度もなく、私の人生に大きな違いをもたらした」

私自身の話しだが、10年以上社会人として生きてきて、点と点がつながる瞬間を幾度も体験してきた。いろいろなことを経験する中で、将来につながる点として残ったのは、目の前にあることにとにかく懸命に取り組んだことだったように思う。
目の前にあることに、とにかく全力で取り組むことが、点となり将来につながっていった。それは、いずれも自分を信じて行動したものだった。
投資銀行に就職したピーターソン氏は、常に「急げ!急げ!」急かされる銀行員時代を「まさに他人の人生を生きているような感じだった」と語った。
「自分は何をしているんだ?」と常に自分を疑いの目で見るようになった彼は、次第に毎朝ドラッグに頼るようになってしまった。
そんな毎日を終わらせるために、彼は独立する道を選び、企業と消費者を映像で結ぶマーケティングを行うコンピューターソフトの会社を立ち上げた。
「自分の中のなにかを信じて動け。いつか点はつながる。僕には投資銀行が向いていないとわかった。それも1つの点になったんだ」
「これは自分の仕事ではない」と気づくことも大事なことなのだろう。全力で取り組んだからこそ出せた答えなのだと思う。「次に何が起きるかは誰にもわからないからね」という彼は自分の中にあるものを信じて前に進んでいく。

「愛と失う」こと:Love and loss

スティーブ・ジョブズのスピーチから。

「私たちは懸命に働いて、ガレージで2人で始めたアップルは10年で従業員4000人以上の20億ドル企業になった。そして私はクビになった。私は30歳にして失職した。とてもおおっぴらに。私は人生の中心だったものを失い、それは衝撃的だった。」

このスピーチから2年ほど経過した2008年、住宅バブルがはじけ、サブプライムローンが暴落。リーマン・ブラザーズが破綻した。
新聞社に勤めていたカルダロン氏は記者として取材に明け暮れていたが、リマーションショック後の大量リストラによって職を失った。
「一生懸命勉強して、働いて、頑張ればいい人生が送れると教えられた。でも全然違うじゃない。私は無力だった。」
ジョブズの友人であるフェルナンデス氏もこのように語る。
「この国は、流れ作業のように、大学に行き、就職し、結婚して、家を買うことが幸せだという考えを植えつけるところがある。ジョブズはそんなレールに乗るな。これが幸せに繋がるものではないと言いたかったんだ。」
いまの時代、用意されたレールの上に乗るだけでは、世の中が悪くなったときに無力になる。
それでも、カルダロン氏は失ってみて、改めて気づいたことがあるという。
「私はジャーナリズムや書くことがたまらなく好きだと気づかされた。わかっていればよかったけど、経験して学ぶしかないこともある。」
そして、自身のウェブサイトでニュースリンクを立ち上げた。収入はわずかでも地元のニュースを取材する毎日に満足しているという。
失わなかったら気づけなかったこともある。それも大事な点になるのだろう。

死〜ハングリーであれ、愚かであれ:death ~Stay hungry Stay foolish~

スティーブ・ジョブズのスピーチから。

「間もなく死ぬことを覚えておくことは、私が知る限り、人生の重要な決断を助けてくれる最も重要な道具だ。」
「なぜなら、ほとんどすべてのこと。つまり、他人からの期待やあらゆる種類のプライド。恥や失敗に対するさまざまな恐れ。これらのことは死を前にしては消えてしまい、真に重要なことだけが残るからだ。

この話は、有名な書籍である「7つの習慣」の一節にも通じるものがある。
7つの習慣では、自分の葬儀を想像して、その時に家族や同僚、友人、それぞれに自分の人格のどういうところを見てほしかったのか、どういう貢献や業績を覚えていて欲しいのか、を考えてみることを推薦している。
これは、自分にとって本当に大切なものを見つける上で、非常に有効な手段になる。
下記は7つの習慣より抜粋。

最も基礎的な応用は、すべての行動を測るための尺度として、人生の最後の姿を描き、それを念頭において今日という一日を始めることである。
そうすれば、自分にとって何が本当に大切なのかをベースに、今日の行動、明日の行動、来週の行動、来月の行動を計画することができる。

卒業後Google社に就職したバプナ氏は2000万円近い高収入を得ていたにも関わらず、どこか物足りなさを感じる毎日を送っていたという。1人残ったオフィスでジョブズのスピーチを見返した彼は、大切なものに気づいたという。
「僕にとって大切だったのは、価値のある存在になることだった。そして、年老いていく両親のそばにいるということも重要だった。娘に祖父母の愛情を与えることもね。」
価値のある存在というのは、人によって概念が違うものだろう。しかし、それを定義しておくことは大事なことだ。人と違うものが大切なのであれば、それは尊重すべきである。
彼は、故郷のインドに戻り、海外旅行の情報を提供するリサーチ会社を立ち上げた。会社経営の目的は、収益をあげ、その資金でインドに学校や施設を建設することだという。
「社会に求められていることのために活動資金を集めたい。それが生きる意味だし。僕にとってのワールドドリームなんだ。」
あの日ジョブズのスピーチを聞いたマドリッド氏は、大切なものにだけエネルギーを費やすべきだと語る。
「死を前にしたら、普段気を煩わせていることなんてどうでもよくなるということ。周りの雑音を聞いてる時間なんてない。きっと自分のしたいことにだけエネルギーを費やすべきなんだね。」
他人の価値観に付き合って時間を浪費する必要はない。大切なのは「何に向かっているのか」なのではないだろうか。

ジョブズがスピーチに付け加えた言葉

スタンフォード大学でのスピーチの後、スティーブ・ジョブズは、iPhoneやiPadなどを大ヒットさせ、2011年8月、アップルは時価総額で世界一の企業となった。
そんな彼が亡くなる3ヶ月ほど前にこのスピーチに関して質問を受けた。
「スピーチに今、つけ加えることはありますか?」という問いに対し、「きっともっと大声で話すだろうな。なぜなら、人生はもっとはかないと今は思うから。」と鋭い眼差しで答えた。
人生は儚い。他人の人生ではなく、自分の人生を見つけて、それに向かって歩き続けることが大事なのではないだろうか。
「スティーブ・ジョブズの子供たち〜ハングリーであれ、愚かであれ」
NHK BSで1月13日の18時から再放送されるので、まだ見ていないかたは是非見ていただければと思う。
http://www.nhk.or.jp/documentary/
BSが見れない方でも、NHKオンデマンドで視聴できる。
http://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2011035059SC000/

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Author
Web制作会社にデザイナー、ディレクターとして従事後、フリーを経て、現在は株式会社プレイドに所属。