ブックファースト店長から端を発した「池上・茂木・勝間バブル」発言の波紋

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8月12日、ブックファースト川越店店長が「一個人ブログ」によって『池上彰「伝える力」』というタイトルの記事が公開された。
タイトルからして書評かと思いきや、記事の出だしはこうだ。

いま書店界で一番話題なのが、
いつ「池上バブル」が弾けるかということです。
最近の書店バブルに「茂木バブル」「勝間バブル」があります。

予想に反して、池上氏の本がバブル扱いされており、茂木氏、勝間氏を過去のバブルとして取り上げている。


at Powell’s Book Store / kana76

バブル っていうのは簡単にいえば「実際の価値よりも高く評価されている状況」ということだろうから、著者に対して極めて失礼な発言になるのではないだろうか。


そして出版点数の多い著者に対して苦言を呈す。

書店「バブル」になった著者は、自分の持っている知識なり、
考え方が他の人の役に立てばとの思いで本を出すのだと思うのですが、
そうであるならばなぜ出版点数を重ねる度に、
「なんで、こんなにまでして出版すんの?」
と悲しくなるような本を出すのでしょう。

「バブル」という状況が生み出されているならば、これは著者の問題なのだろうか?

最初に内田樹氏が反応

ところが、この記事に内田樹氏が反応し、「ウチダバブルの崩壊」という記事を公開した。
内田氏は、この記事の指摘の1部分を引用し、「以下に書かれていることは、かなりの程度まで(というか全部)私にも妥当する。」とし、自らをバブルと評している。
そして「これだけ大量の企画が同時進行しているのは、編集者たちの「泣き落し」と「コネ圧力」に屈したためである。」と、新規出版企画が次々と持ち込まれる背景を語っている。
内田氏は刊行数が多すぎる自身の現状を疑問視しており、編集者から持ち込まれる企画の数々を断れない現状を憂いている。

さらに、茂木氏、勝間氏が反応する

名指しされた茂木氏がまずは反応し、勝間氏もそれに続いて反応した。
話が少しそれるが、内田氏も含め自分自身のブログで考えを述べていることは現在のメディアのあり方の 変革の一端を見たようで、とても興味深い流れだ。

茂木氏

客観的な立場から見ると、ある時期、特定の著者の本がたくさん出て、それが潮が引くように消えていくように見えるのかもしれないけれども、著者、編集者の側からすれば、一冊一冊を誠心誠意作っているだけのことである。

勝間氏

茂木さんも指摘されていますが、市場のブームや人気は当事者がコントロールできるものではないし、コントロールをしてもいけないと思っています。
当事者としては、せっかくいただいたチャンス、それをどうやって最大限に生かすか、考えるのみ、です。今も同じ気持ちです。そして、株価と同じく、さまざまなものは常に、本来価値に収束しようとしますので、淡々と、自分の本来価値を上げることにみなさんと協力しながら務める、それに尽きると思います。

勝間氏の主張はとても正直に自身の心情を語っているように私は感じたが、皆様はどう感じただろうか。
ブックファースト店長も具体例に出した「結局、女はキレイが勝ち」という本、私は勝間氏の本は数冊読んでいるが、この本には目を通していないため、内容について言及することはできないが、勝間氏の得意分野から外れている本であるように感じることは確かだ。
この本自体が、勝間氏が考えたものなのか、持ち込まれた企画によって実現した本なのかはわからないが、勝間氏も「このテーマで伝えられることがある」と判断して出版にいたったのだろう。同時に出版社および編集者にとっても納得しての出版であるはずだ。
この2人の反応を受けて内田氏は再度ブログを書いている。
「バブル」後記
ほかにこんな記事も
我らの我らの勝間和代女史が「バブル崩壊」と書店員に煽られてブログ記事を執筆す

著者を直撃した違和感

発端となったブックファースト店長は著者に疑問をぶつけるような形をとっている。
しかし、これは少しフェアじゃないように感じる。
確かに人気著者による書籍の刊行ラッシュには辟易してしまうことはある。しかし私自身が違和感を持つ瞬間というのは、あおる書店のポップや、キャッチーすぎる表紙、同じ著者による同じような内容の書籍を見た時だ。
特に、気に入った著者による別のタイトルを購入した際に、アプローチが違うだけで前著とほぼ同じ内容だった時はさすがに残念を通り過ぎて無念に感じた。
違うタイトルの同じ内容の本を出版するなんて、出版社の責任を放棄しているとしか思えない。
結局のところバブルは周りによって作られるものだと思う、面白くない本を面白いように取り扱う書店、面白いように告知し、刊行する出版社、面白いように扱うメディア。
これらが奏功してバブルが生み出されているのであろうと思う。
面白くもない本が世に出ているのだとすれば出版社の問題だろうし、売りたくもない本を売らざるを得ない本屋のあり方も問題だろうし、持ち上げすぎるのはメディアの問題だ。
著者にとっては勝間氏の言葉の通り「せっかくいただいたチャンス、それをどうやって最大限に生かすか、考えるのみ」に尽きるのではないだろうか。
苦言を呈するのであれば「著者を取り囲む周りのあり方」もあわせて言及するべきである。
しかし、ブックファースト店長の投げかけにこれだけ反響があるということは現状に違和感を持っている人が多いという状況をあらわにしたと言える。
一読者としては、周りの評価で変な先入観や偏見を持たずにこれからも自分自身で確認をしながら本を愛読したいと思う。
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Author
Web制作会社にデザイナー、ディレクターとして従事後、フリーを経て、現在は株式会社プレイドに所属。