これからの時代は「態度表明する社会へ」

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最近「価値観が変わってきている」と感じことが多くなってきた。世界的な経済危機に直面する中、「受身」でいることがリスクになりつつある。
そして、ソーシャルメディアが浸透したことにより、同じ考えを持った「人と人」がつながりやすくなり、「共感の連鎖」が生まれやすくなった。
家族、同僚、同級生などの枠組みを超え、一人ひとりが影響力を持つようになり「発信することで何かが変わった」経験を持つ人が増えてきた。そしてこれからの時代は「態度表明する社会へ」突入する。

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「態度表明する社会」というキーワードは、私がここのところ私がずっと考えているテーマだ。ソーシャルメディアの浸透により「個人が影響力を持つようになった」と語られることが多くなったが、それを「限られた一部の動き」と捉えていては、未来を見誤るかもしれない。
なぜなら「影響力を行使する人」は確実に増えていき、「態度を表明する」ことが当たり前になっていくからだ。


私がこのキーワードを最初に聞いたのは、株式会社メンバーズが主催したセミナーで株式会社博報堂DYメディアパートナーズの森永真弓さんの講演の時だ。Tech Waveでレポートを書いてが、以下の部分が印象的だった。

態度表明する生活者は、企業を「好きか嫌いか」ではなく、「賛成か反対か」を判断材料として選び、企業にも「態度」を求るようになり、商品やサービスに対して、以下のような問いかけが生まれているといいます。

  • その商品は、自分の信条に合致するか?
  • その商品を使うことで、暮らしと自分は、どう変われるのか?
  • その商品を使うことによる社会への作用は?

このような視点でコミュニケーションを考えることが重要になり、「賛成」を得ることができれば、深くつながるチャンスにもなっていくようです。

人々は、何かの商品を買うこと、何かのサービスを利用すること、それは「態度を表明すること」と気づきはじめており、一つひとつの行動に意味を求めるようになってきているということだ。そして、何かを「選択」したユーザーはソーシャルメディアで自分の行動を「シェア」するのだ。

人々はいまの自分たちの苦しみや悩みを、企業がどれだけ理解し、共感してくれるかを見ている

「スペンド・シフト」著者 ジョン・ガーズマ氏が日経MJ(10月5日掲載)のインタビューで語ったことも、「態度表明する社会」につながっている。
ジョン・ガーズマ氏は、リーマン・ブラザーズが破綻した2008年を境に消費者の価値観は変わり「量より質、見栄より自己研鑽、コミュニティーの重視」というキーワードが重要になってきており、「自分は無力ではない」と感じはじめていると語っている。以下は気になった部分の抜粋だ。
「人々の心は成金趣味の豪邸や気晴らしのショッピングから離れ、コミュニティー、つながり、品質、創造性、自己研鑽にお金を使い始めた。」
「買い物は企業やブランドに対し毎日行われる選挙であり投票活動だ。上質な商品、コミュニティーの存続につながるものには余分にお金を払ってもよいと多くの米国人が考えている。消費者は以前より豊かではなくなったが、行使できる権限は大きくなった」
「消費者が企業やブランドに求めるものとして、05年から09年までの間に減退したのが、神秘的で謎めいていること、自信に満ちていること、感性的、トレンディー、グラマラス(性的魅惑)などの要素。逆に大きく上昇したのが親切で思いやりがあること、高品質、フレンドリー、社会的責任などだ。特に親切さを期待する人は数倍にも増え、私たちも驚いた。」
「人々はいまの自分たちの苦しみや悩みを、企業がどれだけ理解し、共感してくれるかを見ている。開放性、透明性、質の高さ、エシカル(論理的)であることが大事になる。これは調査を通じて証明されている」
安さが正義ではなくなっていることは、私が最近感じていることだ。大企業が圧倒的なシェアを持ち商品を安く提供する、それだけでは買われない時代になっていくのではないだろうか。

イスラエルで起こった「態度表明」

イスラエルでは国民食である「コテージチーズ」が今年の夏に約5シュケル(105円 275g)に値下がりしたという。これまで約8シュケルだったが、高いとして6月頃からFacebookで不買運動が広がり、小売各社が値下げに踏み切ったそうだ。
これ以外にも家賃や税金など幅広い項目でこのような動きがみられ、対策に追われているという。
このようなことがこれから世界中で起こっていくことが予想される。
いま、経済の中心地「ウォール・ストリート」でも大規模なデモが起こっている。人々は「態度を表明すること」に意義を見いだしており、何かが変わると信じ始めている。
実際にチュニジアで起きた独裁政権打倒劇「アラブの春」は、それを証明するにあまりある大きな出来事になっている。
これからの時代は「態度表明する社会へ」突入する。政府や企業はこれらの動きに理解を示さないと想像以上の事態を巻き起こすことになりかねない。
写真/abrockhouse on Flickr

スペンド・シフト ― <希望>をもたらす消費 ―
プレジデント社  著者:ジョン・ガーズマ,マイケル・ダントニオ  価格:1,890円  評価:★★★★★


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Author
Web制作会社にデザイナー、ディレクターとして従事後、フリーを経て、現在は株式会社プレイドに所属。