先日のWWDCで、iPhoneやiPadの次期OS「iOS5」が発表された。ユーザーにとってはワクワクする発表だったが、いくつかの新機能に青ざめたアプリ開発者もいたことだろう。
しかし、この日の発表に一番がっかりしたのは、もしかしたらFacebookのマーク・ザッカーバーグかもしれない。
Facebookは「コミュニケーション・インフラ」を目指しており、あらゆるコミュニケーションをFacebook上で行えるよう日々様々な改良が続けられている。
しかし、モバイル領域に関しては進捗はいまひとつだ。携帯でのショートメッセージサービス(SMS)や、音声通話の領域である。
音声通話に関しては、Skypeの買収を検討していたが、マイクロソフトに買収されてしまった。この出来事はFacebookの計画を大きく狂わせるものだったかもしれない。
そんな中、今回のAppleの発表で飛び出したのが「Twitterとの連携」と「iMessage」だ。
欲しかったTwitterのポジション
「Twitterとの連携」は、OSレベルでTwitterへログインを行い、様々なアプリからTwitterを利用しやすくするものだった。
「OSレベルでの改良ができないiPhone」と考え、Facebook Phoneなるものを計画したFacebookにとっては、唖然とした内容だったのかもしれない。TwitterのポジションはFacebookが理想とする姿のひとつの形だったからだ。
もちろんFacebookはアドレス帳との連携なども視野にいれているので、その点においては不十分だが、写真や考えたことを投稿するのにTwitterが選択される可能性は高まるだろう。
ショートメッセージのシェア争い
そしてもう1つの「iMessage」に関しては、ショートメッセージをする際に、ユーザーの選択肢からFacebookを奪ってしまうのに十分な機能だ。
Facebookは現時点でもすぐに伝えたいメッセージを送るのに最適なプラットフォームとは言えないが、今年の3月に、ショートメッセージやグループチャットが可能な「beluga」を買収し、ショートメッセージの分野を掌握しようとしていた。
Appleがこのタイミングで「iMessage」を投入したのは、少なからずFacebookを意識したものかもしれない。
もちろん「iMessage」は、Androidなどの他のスマートフォンに提供することは絶対にないアプリなので、iOS5の利用者間でしか使えず利用者は限られる。
すでにiPhoneとAndroid向けにアプリを提供している「beluga」は、そのアドバンテージを活かせばまだ道は残されているが、安定性に問題があり苦戦をしている状況だ。
この2つの機能により、iPhoneにおけるFacebookの存在感を薄くし、Facebookの計画を阻害するには十分なインパクトがあったのではないだろうか。
少なくとも、ショートメッセージを送るためにFacebookを立ち上げるユーザーはより少なくなることだろう。
Facebookに秘策はあるのか。モバイル分野における今後の展開に注目である。
写真:Robert Scoble on Flickr