このコーナーでは、「ソーシャルメディア」×「社会貢献活動」を実践されている方を取りあげていき、社会的意義のある活動や、ソーシャルメディアの可能性を皆様にお伝えすることを目的として連載にてお送りする。
第3回のゲストは門田瑠衣子さん。
門田さんはエイズ孤児支援NGOのPLASで代表を務めている方だ。
PLASはエイズ孤児支援NGO・PLASは、HIV/AIDSによって片親もしくは両親を失ったエイズ孤児と呼ばれる子どもたちが直面する問題に取り組んでいる。
世界に1500万人いるといわれるエイズ孤児
エイズ孤児とは片親、または両親をHIV/AIDSによって失った18歳未満の子どものことをいう。必ずしもHIVに感染した子どもなわけではない。
現在世界にエイズ孤児は1500万人以上いて、サハラ以南のアフリカだけで約8割の1230万人が存在するといわれている。
PLASはエイズによって影響を受けた子どもたちが差別されることなく活躍していける社会、そして全ての人がエイズの脅威から解放される世界を目指している。
具体的にはエイズ孤児の保護・サポート、原因となるエイズ感染を予防するための啓発、関心がなかった人に知ってもらうための活動を行っている。
PLASはYoutubeで「映像で知るエイズ孤児」というビデオを公開している。
このビデオは、作る際に協力してもらいたい方をYoutubeで探して依頼をしたそうで、なんともソーシャルメディア時代らしいエピソードがある。
PLASを立ち上げに至った経緯
「もともとボランティアや貧困問題にも関心があった」という門田さんは、大学生のとき平和学の授業を受けたことをきっかけに、「私たちの暮らしと海外との関わりを考えるようになった」と言う。
門田さん「海外から輸送料がかかって輸入されているにもかかわらず安く物が買えるのは、安い賃金で働いている人が途上国にいるからで、場合によっては児童労働が行われていることを知り、自分の生活が誰かの犠牲の上に成り立っているかもしれないと気づいたとき、自分と世界が一気につながっていく感じがした。」
門田さんは大学院生だった2005年3月ボランティアとしてケニアの地を踏んだ。
ローカルNGOの活動にボランティアとして参加し、HIV/AIDSや貧困、医療や教育が行きとどかない現状を知る。
そして孤児院のベットにずらりと並んだ赤ちゃん・子どもの多くが、エイズによって親を亡くしたエイズ孤児であることを目の当たりにした。
門田さん「私の心に印象的に残ったのは、暗いアフリカの側面ではなく、地域をなんとか変えようと奔走するアフリカの人々と、過酷な環境の中でも屈託のない笑顔を見せる子どもたちの姿だった」
夢を語る多くのエイズ孤児に出会い「まずは自分にできることから始めよう。」と誓った門田さんは、帰国から3ヵ月後、同じような思いを持った同世代の若者と出会い、2005年12月、日本で初めてのエイズ孤児支援に特化した団体として、エイズ孤児支援NGO・PLASを有志で設立した。
ソーシャルメディアの利用
PLASではソーシャルメディアを国内において団体やエイズ孤児について興味を持ってもらうための活動に使っている。
mixiのキャンペーンアカウントには800人以上の人が登録しており、mixiをきっかけにイベントに参加してくれる方も多いそうだ。
そして、門田さんは2カ月前から積極的にTwitterも使いだしている。
門田さん「mixiは情報発信としては優れているが、コミュニケーションツールと考えた場合は弱い部分があった。Twitterをやってみて、こんなにコミュニケーションとして使えるものなんだということを実感した。双方向性がすごくある。」という。
敷居を下げフラットな関係性を築けるTwitter
Twitterを2ヶ月間利用してみて感じた魅力をお聞きした。
日々の情報を共有することができる
門田さん「協力していただいている企業の方などは、年に数回しか会う機会がないが、お互いにTwitterでつながっていることで、ほぼ毎日情報交換ができる。そういう人がたくさんいる。」
電話やメールだとそれなりの要件が必要だし、mixi日記やブログという手段もあるが、Twitterならもっと些細なことでもツイートしやすい気軽さがあるし、短い言葉で伝えることが基本となる。それがお互いの情報交換の助けにもつながっているのだろう。
門田さん「日々のツイートによってボランティアの方や支援者の方が定期的にPLASのことを思い出してくれるきっかけになる。」
不特定多数へ向けたツイートでもフォローしているユーザーにはツイートが自分のタイムラインに現れる。それがPLASのことを思い出すきっかけになり、ツイートが気になったらブログやサイトをチェックするなどの動機に繋がりやすい面もあるのだろう。
フラットの関係性を築ける
門田さん「支援している企業の社長さんとお話しするには、担当の方にまず話を通して、という段階を踏む形が多いが、Twitterだと直接フラットなつながりができる。」
フラットにつながれるという面はTwitterの魅力の1つだろう。気軽にフォロー、フォロワー関係になれるし、その人に宛てたメッセージに関しても気軽に送れる雰囲気がある。それは門田さんも実感しているところだという。
門田さん「コミュニケーションはとりやすくなった。支援者の中には団体のメールにはコンタクトをとりづらいが、Twitterなら気軽に質問ができるという方もいる。些細なコミュニケーションを重ねていくことが信頼関係を築くきっかけになっていく」
Twitterは関心を持ち始めた人の最初の接点としてはとても良い性質を持っていて、関係性の構築にとても役立っていると言えるのかもしれない。
5月7日の世界エイズ孤児デー
PLASではTwitterをはじめてから初めてのイベントとなる120人を集めるチャリティパーティが世界エイズ孤児デーに合わせた5月7日に恵比寿で行われる。
このチャリティパーティは世界エイズ孤児デーキャンペーンの活動の一環で、このキャンペーンは日本で唯一のエイズ孤児問題啓発キャンペーンとして2007年よりPLASが主催している。
詳細はイベントページを見て頂くのが一番だと思うが、多くのゲストスピーチが予定されており、参加費の一部はエイズ孤児支援にあてられるため、参加者は楽しみながらPLASの活動を支援することができる。
このイベント用に 「#May7」というハッシュタグを使うことが予定されているそうなので、当日キャンペーンにいけない人もチェックしてみてはいかがだろうか。
現在キャンペーンの一環でチャリティオークションも行われており、・スラムダンク、バガボンドなどで人気の漫画家・井上雄彦さんのサイン入りキャンペーンTシャツなど豪華なラインナップになっている。
当日はイベントの模様をUSTREAMでも配信しますので、お時間のある方は是非ご覧ください。
http://social-bridge.tv/live/channel_detail_sbtvlive.php
FIFAワールドカップ2010に向けたキャンペーンも計画中
今年はサッカーのワールドカップが南アフリカで開催される。PLASではアフリカへの注目が集まるこのタイミングに合わせて、Twitterを使ったキャンペーンを計画している。
ワールドカップが開幕する6月10日から1週間でエイズ孤児に関する様々な人のツイートが総計6000ツイートになるよう働きかけていくことを考えているそうで、それは門田さんのツイートをリツイートしてもらったり、エイズ孤児に関連するツイートをしていただいたりするなど、多くの人に関わってもらえる形を考えている。「これをきっかけに考えてくれる人が増えてくれれば」と門田さんはいう。
門田さんのような活動を行っている人にとっては、関心がなかった人にいかに関心を持ってもらい、信頼していただくかということは重要なテーマになるだろう。
信頼は人間関係によってもたらされることが多い。すでに信頼している人による紹介であれば、その敷居は極端に下がる。Twitterなら、PLASに共感した人はリツイートという手段で自分のフォロワーに紹介することができる。その輪が広がっていけば大きな動きにつながる可能性は十分にある。
そして、門田さんは集まった6000ツイートの量を目に見える形で展示することも予定している。6月20日(日)‐24日(木)の5日間、目白のギャラリーfuuroにて企画展示を行う。
「たくさんの人に知ってもらうためにメディアにも来てもらえるような企画をして、ソーシャルメディアからマスメディアに上げていきたいと考えている。」
記録に残すという面でも展示会を行うこと大きな意味があるだろう。それが多くの人の目に触れることにもなる。
この記事を読んで少しでも関心を持っていただけたら、5月7日のイベントはもちろん、6月のTwitterのキャンペーンに参加してみるなど、出来るところから関わってみてはいかがだろうか。
門田さん(@Rui_Plas)のアカウントをフォローすれば、今後の活動の告知を確認することができる。