GIGAZINEの求人記事を読んで働き方やメディア運営について考える

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GIGAZINEが掲載した求人記事が話題になっている。
今回はこの記事から、働き方やメディア運営について考えてみたいと思う。
【求人募集】GIGAZINEのために働いてくれる記者・編集を募集します
この記事はいくつかの観点で読めると思うが、やはりポイントになるのは「働く」ということに関してだろう。この記事から感じとれるのは、社員が自分が思うような考え方や行動を示してくれないことに対する不満が限界に達している様子だ。
要約するとこういう社員を求めているということだろうか。

  • 仕事とプライベートを分け隔てることなく仕事に望める人
  • GIGAZINEでしか働きたくないと思える人
  • 自主的に行動ができること
  • 編集長やデスクの業務命令は拒否しないこと
  • 赤字の場合は給料アップを望まないこと
  • どのようなジャンルの記事も書けること
  • GIGAZINEを支えているという自覚が持てること

そして以下のような一文がある。

「自分はGIGAZINEだからこそできることをするためにGIGAZINEで働きたい、ほかのところでは働きたくない!」というプロフェッショナル的な考え方をする人を求めます。

ここで出てくる「プロフェッショナル的な考え方をする人」というのは大いに違和感を覚えた。ほかのところでは働きたくない!というのが「プロフェッショナル」なのだろうか。きっとこれは「GIGAZINEファン的な考え方をする人」なのではないだろうか。

まず触れておきたいメディア運営の苦悩

僭越ながら私もTECH SE7ENというメディアを運営する人間という観点で痛く伝わってきた編集長の苦悩を考えてみたい。
GIGAZINEは2000年に個人サイトとしてスタートし、2006年から複数人で執筆する体制に移行している。GIGAZINが公表している記事によると2010年6月の月間ページビューは6963万で、前年同月比1327万PV増になっており、アクセス数は増加を続けている巨大ニュースサイトである。
編集長の山崎氏は現状のGIGAZINEについて以下のように述べている。

GIGAZINEの記事の質が低下しているという指摘も多数いただくようになり、それらを補うために「量から質は生まれる」ということで人をどんどん雇って記事の量を増やし、質を上げようとしてきましたが、そもそも私自身の価値観や世界観、問題意識や目指すものとあまりにも違いすぎる人材が多数派を占めるに至り・・・

「量から質は生まれる」というよりは「数打ちゃ当たる」理論のように感じてしまうが、そこは置いておくとして、編集者の「価値観や世界観、問題意識や目指すもの」を共有することは非常に困難なことであることは間違いないだろう。ましてや、GIGAZINEのようにユニークな記事を1日20記事以上公開するようなメディアであれば尚更である。
しかし、それでも社員に「メディアのあり方」を伝えることは編集者の役割であり、一番大事にしなくてはならないところなのだろう。
メディアのスタンスを明確にし、「何を重視して取り上げていくのか」「何を伝えることを目指していくのか」という大前提を日々の対応でおろそかにせず、常に共有することが重要である。
そのメディアのあり方を個々が同じように語れるレベルまで共有し、そしてその指針となるような考え方を明文化する。そのような作業が複数人でメディアを運営していく為には必要になるのではないだろうか。
ここで見えてくるものは、山崎氏がGIGAZINE社員と意思の疎通がほとんど取れていないということではないだろうか。メディアを一緒になって作り上げていこうという関係性の構築とは、ほど遠い状態にあるということである。
山崎編集長は4年前の2006年7月の記事で以下のように述べている。

  • 山崎さんがいなくてもGIGAZINEが更新される状態にしなくてはならない
  • 事業の継続性が大事だからこそ、得意不得意に関わらず誰でも記事を制作できるようコラボレーション可能な組織作りを行っている

本格的に複数人体制に移行したばかりの当時に語っていた言葉の中には、その為に重要なことが何であるかは含まれていなかったのだろうか。

働くことに対する意識

働くという点に焦点をあてると、記事の中に注目したい箇所がある。

つまり、GIGAZINEで働きたかったわけではなく、どこでも金さえもらえれば良かった、そういう人材を私は雇ってしまったのです。これが大きな間違いでした。

これは一般的に企業が抱えている問題とダブって見える。
多くの学生は高校や大学を卒業すると同時に企業を選び就職することになる。就職前には「自分がやりたいこと」を懸命に探さなくてはならない。その上、日本人なら誰でも聞いたであろう「一流の大学に行って、一流の企業に就職しなさい」という考え方。
この状況で、自分が本当にやっていきたいことや自分が目指すものと一致する企業に就職することは並大抵のことではない。ほとんどの人がなんとなく就職する道を選ぶのが常だったのではないだろうか。
つまり、多くの人が「働く理由」を見いだせないまま働いてきたという現状がある。そうなると、目的を「お金のため」という考えに至ってしまうのも無理はないという感がある。
私が考える根本的な働く理由は「自分が他の人の為になることをすること」そして「自分が実現したいことを実行するため」である。
と言い切ったものの、最近まで私自身も見失っていたことである。同じような人は多いのではないだろうか。そもそも何の為に働くのかは突き詰めて考えるべきだ。
多くの企業が望むであろう「この会社で働きたかった」と社員がいう会社はその企業自体理想的な会社であるといえるだろう。その人が求めるものがその会社にあるということだからだ。

理想的な企業

実は先日、理想的な企業ってどんな企業なのかを考える機会があった。
その際に挙げた条件は以下のようなものだ。
1.理念を明確に示し、それが社員に行き届いていること
2.利益を出せる堅実な事業を築きながら、挑戦する分野に力を惜しまない
3.顧客視点を常に重視する
4.個々の創造性を尊重し、個性が活かせる会社
そしてなにより、明言したことや目標を実現していく会社であること。
これが私が考える理想的な会社である。
実はこの「理念」に対して社員が共感できるということは非常に重要なことである。
ここで共感が得られないのであれば、やはり本当の意味で自立的に働いてもらうことは難しいことだと考えられからだ。
このGIGAZINEの例もそうだが、この「理念」の部分が共有できていない、もしくは共感を得られていない企業が非常に多いと感じている。
結局のところ、どんなに情熱をもって入社した社員だとしても、その会社が共感する理念を示せなければいとも簡単に情熱を失わせてしまうことができることを理解するべきである。
「同志」を集めたいのであれば、まずは共感できる理念を示すべきである。
もしその理念を示して社員がついてこないのであれば、お金で働いてくれる人を捜さなくてはならないような理念だということなのだろう。

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Author
Web制作会社にデザイナー、ディレクターとして従事後、フリーを経て、現在は株式会社プレイドに所属。