検索エンジンとしての限界、Googleに求められる変革

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ここのところ「検索の時代は終わった」「これからはソーシャルの時代だ」という声が聞こえてくる。
検索エンジンを代表するGoogleに一体いま何が起こっているのだろうか。Googleがたどり着いた検索エンジンとしての限界と、求められる変革についてまとめた。

google

少し古い数字となるが、2010年4月の月間総検索数は44億を超え、1日平均では1億4000万件という膨大な量の検索が日々行われている。(ネットレイティングス発表資料
この数字からしても、検索エンジンはウェブサイトを閲覧する上で、起点となるものであり、目的の情報にたどり着くためには欠かせないものであることは間違いないだろう。
Googleは検索サイトの中でも圧倒的であり、日本でトップの検索シェアを誇るYahooでさえも「Googleがベスト」として、Googleの検索エンジンを2010年7月から採用したほどである。

そしていま、そのGoogleの存在を脅かすのが、7億人の月間アクティブユーザーを抱えるFacebookだ。


FacebookはSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)であって、検索サイトではない。なぜ、そのFacebookが驚異になるのか。
1つは単純にユーザーの行動の変化が理由だ。いままでYahooやGoogleがもっとも滞在時間の長いサイトであったが、2010年8月にFacebookが初めて首位に躍り出た。(チャート:BUSINESS INSIDER

char

滞在時間が長いということは、サイトを訪問する際の起点になりやすいということである。
ブラウザを立ち上げてから最初に閲覧するサイトは、GoogleやYahooではなく、Facebookになっているのだ。これによって、ニュースなど新しい情報や面白い情報などを「Facebookから入手する」という動きが生まれている。
日本でも「最新情報はTwitterやFacebookから入手する」という声を多く聞くようになってきた。
しかし、これは「検索」の座をGoogleが奪うという話ではない。問題は、Googleが現在抱えている問題と、Facebookが所有する「人の力」による、検索のあり方の革命が起ころうとしている点だ。
下記は最近話題になった記事だが、どの記事もGoogleの仕組みが限界に来ている点を指摘している。

Googleが築き上げた検索エンジンは、世の中の膨大なサイトをすべてインデックスし、その中から、検索したキーワードにマッチするページを瞬時に表示してくれる。「わからないことがあればまずググれ」といわれるほど、Googleで検索すれば何でも答えが出てくると言っても過言ではない。
その検索エンジンの仕組みに限界が見え始めているのだ。その限界の理由は、Googleが最近導入した「Social Search」や「Google +1」とも関係してくる。

Googleの検索エンジンの仕組み

Googleの現状を知る上で、まずGoogleの仕組みを紹介しておきたい。
ウェブサイトのページビューを増やしたいのであれば、Googleに評価されることはいまでも重要なことである。それは検索数からも明らかであるし、多くのサイトは50%以上が検索サイトからの流入だ。
Googleは、良質なサイトを検索結果に表示するために、独自のアルゴリズム(検索順位決定のロジック)を形成し、ロボットが収集した情報を元にサイトを評価し、検索結果に表示している。
そのアルゴリズムは人為的な判断を極力挟まずに機械的に行なうことで膨大な量のサイト評価を実現した。
つまり、Googleの評価方法は誰かがウェブサイトに訪問して評価してくれるのではなく、ロボットがテキスト情報(ソースコード)を回覧し、アルゴリズムにのっとり評価するということだ。
人が見るのではなく、ロボットが見るのだから、そのロボットに正しく認識してもらわなくてはならない。そういった理由からSEO(検索エンジン最適化)が生まれた。
本来のあり方は、Googleに適切にサイトを評価してもらうためにSEOを行うことだ。
その為、Google自身もウェブマスター向けにガイドラインを公開している。

Googleを欺くサイトが量産される

しかし、そのアルゴリズムを逆手にとって、無理やり評価を高めようとする動きが広がった。
誰にも評価されていないにも関わらず、リンクを自分で張りまくって「評価されている」ように見せかけたり、人が読んだら「文章として成立していない」記事を機械的に自動生成し、キーワードだけはしっかりと設定したり、とロボットを欺いてトラフィックを稼ぐ動きが広がった。
検索していて「読んでも意味がわからない文章」や「記事タイトルとリンクだけを張ったサイト」などを見たことがないだろうか。これらは検索サイトから訪問したユーザーが、広告をクリックしたり、アフィリエイト経由で商品を購入したりすることを狙ったサイトである。
Googleはこれに対しかなり積極的にに対処してきた。まさにイタチごっこな状況ではあったが、検索エンジンがいまもしっかりと機能しているのは、Googleが迅速に対応してきた証拠だ。
しかし、これが限界に近づいてきたのだ。
Googleに限界を痛感させたのが「デマンドメディア」という新しいタイプのメディアの登場だ。

Googleの限界を感じさせた「デマンドメディア」

デマンドメディアは、人為的なものと機械的なものの狭間といえる微妙なラインをついた仕組みだ。(デマンドメディアの代表とされる「eHow」)

ehow

デマンドメディアに掲載する記事は、ライターが書くテーマを決めるのではない。
書く記事の内容は、検索されているキーワードを100以上の情報源から20億程度の検索履歴を解析して、ニーズのある記事を分析し、他のサイトではあまり扱われてないテーマを抽出、ニーズがあるとされたテーマに沿ってSOHOのライターなどに15ドル程度で記事を書いてもらう。そうやって記事を量産していくメディアだ。

ここでポイントとなるのが「検索されているキーワード=ニーズ」といえる点だ。このニーズにしっかりと答えるようなページを量産しているのであれば、それはむしろ好ましい流れといえるだろう。
しかし、検索に引っかかるだけで、なんの解決にも導かない、ニーズにそぐわないものなのであれば、これは不要なコンテンツを量産していることになる。
デマンドメディアは検索からトラフィックを稼ぐことが目的である為、記事の内容はあまり重視されていない傾向がある。質が低くてもかまわないというわけだ。
下記記事でデマンドメディアがどのような記事を書いているのかが紹介されている。

問題は、ロボットには「良記事」なのか「ゴミ記事」なのか、このような判断はできないことだ。
ロボットは、どのようなサイトからリンクが張られていて、どのようなキーワードが文章中に含まれているかを解析することはできても、その文章の正確性は判断できないし、内容に意味があるのかどうかを判断することはできない。
ここにGoogleの限界がある。
最近Googleが「Social Search」や「Google +1」で、検索結果に人力を取り込もうとする動きは、タイミング的にはギリギリと言えるものである。

Googleに求められる変革

デマンドメディアの収益は主にGoogleのAdSenceから得ている。
つまり、「Googleの高度な検索システム」+「Googleの広告システム」を最大限に利用して生み出されたのが「デマンドメディア」というわけだ。
Google AdSenceは大抵のサイトで広告を掲載することが可能なとても敷居の低いサービスだ。日本でも多くのサイトで採用されている。
Google AdSenceの素晴らしい点は、広告を掲載しているページの内容にあわせて、自動的に近い内容の広告を表示する点だ。さらに最近では検索履歴を元に広告を表示するようにもなっている。つまり、検索から訪問したユーザーの広告クリック率は非常に高くなる。(クリックで初めて広告料が課金される)
これらの仕組みは、多くのサイトに広告収益をもたらし、運営を支えるサービスでもある。ただし、「広告収入だけを狙った意味を持たないサイト」を大量に発生させたのも、このGoogleの仕組みが招いたものなのかもしれない。この仕組みで本当に儲かっているのは、良記事を書くサイトではなく、検索サイトにひっかかる記事を大量に書ける人であったのも事実なのだ。
「果たしてこの仕組みがないウェブはどのような姿だったのだろうか。」ふと考えてみたくなるテーマでもある。
限界点にたどり着いたGoogleはあり方を少し変える必要がある。
Googleがあまりにも機械に頼りすぎたのが「いままで」で、人力に頼りだした新たな局面が「これから」だ。
すでにTwitterやFacebookで言及された記事への評価を高めるようになっており、その一歩を踏み出しているが、さらにこれを推し進め、Googleの検索エンジンと利用者の力がうまく融合したとき、より完全な検索サイトが生まれる。
果たしてGoogleはこの変革を成し遂げることができるのであろうか。それとも先にFacebook、もしくは他の第3者がこれに変わる仕組みを生み出すのだろうか。
写真:brionv on Flickr

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
share post to:
Author
Web制作会社にデザイナー、ディレクターとして従事後、フリーを経て、現在は株式会社プレイドに所属。